家族みんなの節水チャレンジ

データで比較する家庭用浄水技術の節水性能:逆浸透膜とその他の方式

Tags: 浄水技術, 節水, 逆浸透膜, データ分析, 家庭用水

家庭における水の利用は多岐にわたりますが、飲料や料理に使用する水を浄化する取り組みも一般的になってきました。浄水技術の導入は、水の安全性を高める一方で、その方式によっては水の無駄、すなわち「排水」を伴うことがあります。既に基本的な節水対策を実施されている皆様にとって、こうした浄水技術の節水性能に関するデータに基づいた情報は、更なる水使用量削減に向けた検討材料となり得ると考えられます。

本稿では、主要な家庭用浄水技術の仕組みと、それぞれの方式が水の利用効率、特に排水量にどのように影響するのかを、技術的な視点と可能な限りデータに基づいて解説します。

家庭用浄水技術の主要な種類とその原理

家庭で利用される浄水技術は、除去したい物質の種類や水の利用目的に応じて様々な方式が存在します。代表的なものをいくつかご紹介します。

逆浸透膜方式における排水のメカニズムとデータ

前述の通り、多くの浄水方式は排水を伴いませんが、逆浸透膜方式は浄水過程で排水が発生するという特徴があります。これは、半透膜の表面に不純物が堆積するのを防ぎ、膜の性能を維持するために、膜を透過しなかった不純物を含む水を「排水」として流し捨てる必要があるためです。

この排水量は、製品の設計(膜の種類、ポンプの有無、水圧など)や原水の水質、水温によって変動しますが、一般的に純水1リットルを生成するのに、同程度の量、あるいはそれ以上の排水が発生することが多いとされています。

具体的なデータとしては、例えば家庭用逆浸透膜浄水器の多くは、純水と排水の比率が「1:1」から「1:3」程度の範囲で設計されています。これは、純水1リットルを生成するために、合計で2リットルから4リットルの原水が必要となり、そのうち1リットルが浄水として利用され、残りの1リットルから3リットルが排水として捨てられることを意味します。

例えば、1日に10リットルの浄水を使用する家庭の場合、純水1リットルあたり1.5リットルの排水が発生する製品では、1日に15リットルの排水が発生することになります。1ヶ月では約450リットル、1年間では約5400リットルの水が浄水のために使用されずに捨てられる計算になります。これは、一般的な家庭の年間水使用量の一部を占める無視できない量となり得ます。

ただし、近年の逆浸透膜技術では、排水量を削減するための工夫が凝らされた製品も登場しています。例えば、排水の一部を再循環させて利用するシステムや、高い圧力をかけて水の回収率を高めるポンプを内蔵したモデルなどです。これにより、排水比率を「1:0.5」や「1:1」程度に抑えた製品も存在します。導入を検討される際には、製品仕様に記載されている純水と排水の比率(回収率)を確認することが重要です。

各浄水技術のメリット・デメリットと節水への示唆

| 浄水技術 | 主な除去対象 | 排水発生 | 浄水能力(不純物除去の広さ) | コスト(本体・維持) | 設置の手間 | 節水観点からの評価 | | :--------------- | :---------------------------------------------- | :------- | :----------------------- | :----------------- | :----------------------- | :----------------------------------------------------- | | 活性炭 | 残留塩素、有機物、カビ臭など | 無 | 限定的 | 低 | 容易(蛇口直結など) | 排水なく節水に影響なし | | 中空糸膜 | 濁り、雑菌、カビ、原生動物など | 原則無 | 中程度(溶解物不可) | 中程度 | 比較的容易(据え置きなど) | 排水なく節水に影響なし(一部逆洗浄除く) | | イオン交換樹脂 | 硬度成分、特定のイオン | 条件付 | 限定的 | 中程度 | 比較的容易(据え置きなど) | 再生時に排水発生の可能性 | | 逆浸透膜 | 溶解性イオン、微粒子、ウイルス、バクテリア等ほぼ全て | 有 | 極めて高い | 高 | やや手間(設置場所考慮) | 排水が多量に発生する可能性があるため、製品選定に注意が必要 |

逆浸透膜方式はその高い浄水能力が最大のメリットですが、排水量の多さがデメリットとなります。一方、活性炭や中空糸膜方式は手軽で排水もありませんが、除去できる不純物の範囲が限られます。

節水を重視する場合、まず排水が発生しない活性炭や中空糸膜方式を検討するのが自然な流れです。しかし、より高度な浄水レベルが必要な場合、逆浸透膜方式を選択せざるを得ないこともあります。その際は、先述したような排水量を極力抑えた高回収率モデルを選択することや、発生した排水をトイレの洗浄水や掃除、庭の水やりなどに再利用することを検討することで、トータルの水使用量を抑制することが可能になります。ただし、排水の再利用には貯留や運搬の手間が伴う点も考慮が必要です。

まとめ

家庭用浄水技術の選択は、水の安全性への要求レベルだけでなく、節水への意識や取り組み方にも影響を与えます。特に逆浸透膜方式は高度な浄水能力を持つ反面、構造上一定量の排水が発生します。製品ごとの純水・排水比率に関するデータを比較検討し、ご自身のライフスタイルや求める浄水レベル、そして節水目標に合った最適なシステムを選択することが重要です。

浄水器の導入検討にあたっては、単に初期費用や浄水能力だけでなく、排水量、フィルター交換頻度、維持コスト、そして設置やメンテナンスの手間といった多角的な視点から評価することで、より合理的で節水にも配慮した選択が可能になるでしょう。科学的根拠に基づいた情報収集が、家庭での賢い水の使い方をサポートすると考えられます。